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■□有機EL素子□■

2008/10/18

有機EL素子は有機エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子です。近年、製品利用が進み、携帯電話のディスプレイなどに用いられています。また、TVディスプレイ用素子として非常に有用な特性を持っており、その応用が期待されてます。さらに、折り曲げられるディスプレイ、面発光型照明など、近未来的な製品を実現する可能性を持っており、今後も目が離せない技術のひとつと言えるでしょう。

研究開発の歴史

1953年にA.Bernanose が、塩素酸マグネシウムやセロファンに吸着させた有機染料の交流電場の作用下での発光を観測しました。これが、初めて観測された、有機蛍光物質によるEL現象と言われています。

1963年、M.Pope、H.P.Kallmannらによって、アントラセン結晶の直流電場印加による発光が観測されました。直流電場下での発光が初めて観測されたことになります。これ以後有機ELの開発が進みましたが、この当時は駆動電圧が高く実用化には遠かったようです。そのため、蛍光材料を薄膜化して低電圧を目指す研究が進められました。

1982年、P.S.Vincett、G.G.Robertsらが、アントラセン薄膜を形成し、青色のEL発光を観測しました。薄膜化により、低電圧が実現しました。しかし、耐電圧が低いなどの問題がありました。

1987年、コダック社のT.C.Tangらが積層構造を持つ素子を発表しました。従来のものに比べ高輝度、高寿命が実現されていました。現在の有機EL素子の元といえるものです。これによって有機EL素子の実用化が進みました。

材料

有機EL素子は積層構造を持っており、その役割ごとに異なった材料が使用されます。

正孔注入材料

正孔注入を促進。CuPc等が用いられる。

正孔輸送材料

正孔が移動しやすくする。α-NPD等が用いられる。

電子注入材料

電子注入を促進。

電子輸送材料

電子の移動を促進する。Alq3等が用いられる。

発光材料

この材料内で電子と正孔が衝突し、発光が起こる。発光形態からりん光材料、蛍光材料、材料から高分子材料、低分子材料に分類される。Alq3などが用いられる。

透明電極

電極の内、少なくとも片面は光を透過する必要がある。透過性と、導電性を持った材料が使用される。ITOにスズをドープしたものが一般的である。

発光原理

電子と正孔が有機分子上で再結合することにより、有機分子が励起。励起状態から基底状態にもどる際に余分なエネルギーが光として放出されます。これが有機EL素子の基本的な発光原理です。効率よく再結合が行われるようにするため、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層を素子内に設けています。そのため、正孔注入層から入った正孔は正孔輸送層を通り発光層へ運ばれ、電子注入層から入った電子は電子輸送層を通り発光層へ運ばれ、発光層において再結合が起こります。

作製方法

真空蒸着法

主に低分子材料を用いた素子の薄膜作製に用いられます。陽極として用いるITOガラス基板と、正孔輸送材料や発光材料などを乗せたボートを真空に減圧した真空チャンバー内に置き、ボートを加熱することによって上方に飛び出した分子が基板上に蒸着します。膜厚の制御が容易という利点があります。

キャスト法

溶液から薄膜化する方法です。回転させた基板に溶液を滴下し、遠心力により拡散させるスピンキャスト法や、溶液に基板を浸し、一定時間後に引き揚げるディッピング法などの種類があります。

インクジェット法

吐き出したインクを展着させる方法です。材料効率が非常に高いという利点があります。タンク内のインクを気化させ、その圧力によりインクを吐き出すバブルジェット法式と、逆圧電特性によりタンクを収縮させインクを吐き出す圧電方式があります。

有機ELディスプレイ

既存のディスプレイの内、CRTは大きさと重量、PDPは動画表示、LCDは視野角にそれぞれ問題がありますが、有機ELディスプレイはそれら全てをクリアしています。また、暗所ではPDP同等以上、明所ではLCD同等以上、CRTに匹敵する素晴らしい画像表現力を持ちます。有機ELディスプレイの利点は次の通りです。

有機ELディスプレイの利点

 ・応答速度が速い

 ・視野角が広い

 ・色再現域が広い

 ・省電力

 ・薄型化が可能

 ・軽い

但し、寿命が短いという欠点があり、改善が期待されてます。

参考文献

特許庁 「技術分野別特許マップ」 有機EL素子 http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/map/kagaku14/frame.htm

「トコトンやさしい有機ELの本」 森竜雄著 日刊工業新聞社

「有機ELのすべて」 城戸淳二著 日本実業出版社

「有機ELディスプレイ」 時任静士・安達千波矢・村田英幸著 オーム社

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